世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は金曜日、外部の運用会社に対し、企業との対話を一層深めるなどスチュワードシップ活動の強化を求めていく方針を明らかにした。長期的な投資収益の向上を狙う。
運用資産約1.8兆ドルを抱えるGPIFは、2025/2026年スチュワードシップ活動報告書の中で、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を含むスチュワードシップを長期リターン改善の観点から推進すると説明。2030年3月までの5年間における基本方針を示した。
同基金は、運用会社による実効的なエンゲージメント(企業との対話)が企業価値の向上と持続可能な経済成長につながると指摘。重点分野として、資本コストや株価を意識した経営の促進、サステナビリティ関連開示の充実、実質的なコーポレートガバナンスの強化の3点を挙げた。
日本では2014年、機関投資家による企業への関与を促す改革の一環としてスチュワードシップ・コードが導入された。GPIFは世界有数の資産保有者として、外部運用会社に同コードの採用やESG要素の投資判断への組み込みを求めることで、この流れを主導してきた。
資本効率については、国内株式の運用会社への聞き取り調査から、先進的な企業を中心に投資家と企業の対話が高度化し、最高財務責任者(CFO)や最高経営責任者(CEO)、取締役会といった意思決定層に議論が及ぶケースが増えていると指摘した。
運用会社は、同業他社との比較などを用いた分析や、経営陣への情報共有を通じて、企業に積極的な対応を促す取り組みを進めているという。
一方で、エンゲージメントに応じやすい企業は、財務余力があり変革の必要性を認識する経営陣を持つ傾向があると分析。対照的に、業界環境が厳しい企業や業績が振るわない企業、投資家との認識にギャップがある企業では、目標や方針が示されていても進展が限定的となる場合が多いとした。
組織内の縦割り構造や取締役会の監督機能の未整備も障害として挙げられた。
サステナビリティ開示については、従来の「優れた統合報告」に関する調査を見直し、「優れたサステナビリティ開示」に焦点を当てた新たな枠組みを導入したと説明した。
コーポレートガバナンスに関しては、日本のガバナンス・コード改訂に向けた議論を踏まえ、国内運用会社と意見交換を実施。多くの運用会社が取締役会事務局機能の強化や独立社外取締役の監督機能の向上の重要性を指摘したという。
GPIFは2015年に国連が支援する責任投資原則(PRI)に署名している。ESG要素の投資プロセスへの統合は長期的なリスクと機会の管理に不可欠であり、資本市場の持続可能性にも寄与するとしている。
2026年度に向けては、スチュワードシップ方針の開示や対外発信を強化するとともに、運用会社の評価制度を導入する方針を示した。評価では、投資とスチュワードシップの統合度、企業との対話の質、投資先企業や市場とのコミュニケーションの有効性などを重視する。
世界的にも、大規模年金基金や資産保有者の間でESGの統合やアクティブ・オーナーシップを受託者責任の中核と位置づける動きが広がっている。2006年に発足した国連支援の責任投資原則(PRI)には現在、4,900以上の機関が署名し、運用資産総額は120兆ドルを超える。
英国やオーストラリア、タイなど各国でも、年金基金に対し投資先企業の監督やガバナンス、サステナビリティ、長期的価値創出に関する積極的な関与を求めるスチュワードシップ・コードや投資ガバナンス規範が導入されている。
欧州ではさらに踏み込み、スチュワードシップの実績を運用委託の条件とする年金基金もあり、ESG対応が遅れている運用会社から資金を引き揚げる動きも見られるなど、運用会社に対する圧力が強まっている。

